表現者の時代

 現在、デジタル音楽で主流となっているiTMSに関するニュースをいくつか見てみると、この業界の事情が垣間見えてくる。例えば、

1)ロックバンドのオールマン・ブラザース・バンドとチープ・トリックが今年、Sony Musicを提訴した件では、原告はSony Musicに対し、音楽パブリシャーへの支払い分を差し引いた支払われている売上70セント(1曲当り)の内、約30セントがアーティストに支払われるべきだと主張している。そして、現状では、Sony Music側はダウンロード販売をCDと同じメディアの販売同様に「コンテナ/パーケージ代」20%、「オーディオファイル代」50%を差し引き、アーティストには約4.5セントしか払っていない事が触れられている。

2)AppleのCEOであるジョブ氏は、iTMSを通した楽曲販売により、製造コストが余計にかかるCD販売より多くの利益を得ていると主張している。

3)大手レコード会社は、iTMSの小売価格を値上げしたがっている。

のようなニュースが報道された。費用構造を見ると、以下の様になっている。

Sony Music
CD & カセットテープ並びにデジタル音楽の1曲当り
  4.5c(artists)+50%(オーディオファイル代)+20%(コンテナ/パッケージ代)

つまり、これをiTMSの99cの料金に置き換えると、

 99c=29c(Apple)+4.5c(artists)+35c(=70c*50%)+14c(=70c*20%)+16.5c(手数料)

となる。Sony Musicは99cの売上の内、65.5セントがSony Musicに渡っている事になる。そこで、この提訴では、

99c=29c(Apple)+30c(artists)+40c(Sony Music)

とするよう求めている。別な角度から見てみると、

新しいサービスでありながら、伝統的な費用体系を反映していた

1)ダウンロード価格=29%+5%+66%(四捨五入)

を、

2)ダウンロード価格=29%+30%+40%(四捨五入、100%にならず)

とするよう、アーティスト側が求めていた訳である。これをどのように解釈していたらいいのだろう。次回は、島崎藤村の例を挙げながら、考えていきたい。
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