“せんりのくつ”
大石 真 (著), 若菜 珪
食べるのに困った母親によって、山に置き去りにされた子供たち三人は、互いに助け合いながら山小屋に向かうが、そこは鬼の棲む家。同居している「ばあさま」に助けられ、逃げ出す途中で、それを追って来て、鬼から千里を飛ぶことのできる靴をはいたまま、一休みしているところに遭遇してしまう。そして兄弟は勇気を出して、その靴を盗み出し、無事母親の元に帰り、幸せに暮らしました。という所でこの本は終わる。 “Core Value” の続きを読む
カテゴリー: 小さき者の視点
見える風景と見えない風景
“もりのかくれんぼう”
末吉 暁子 (著), 林 明子 (イラスト)
いつも見慣れた団地の風景がふっとした瞬間に、大きな森になり、そこではくま、りす、さる、きつねなどがかくれんぼをしている。そしてそこに迷い込んだ「けいこ」も動物のリーダーの「かくれんぼう」に引き込まれ、一緒にかくれぼう。「けいこ」が鬼になり、数をかぞえている時に、いつの間にか、元の団地にたっていた。そんなお話。 “見える風景と見えない風景” の続きを読む
Life
“もみの木”, ハンス・クリスチャン・アンデルセン (著)/スベン・オットー (イラスト)
切ないお話である。外界にのみ目を向けたもみの木は、お日さまのひかりや風が言う「若さ」の意味するところを知らず、まだ見ぬ世界に思いをはせて過ごしていた。
そしてやがて森から切り出されてクリスマスツリーとして飾られ、その絶頂期を迎えるが、翌日は納屋の中。初めはまだ希望を持って過ごすが、ネズミたちに自分の思い出を語るうちに、それまで気づかなかった「若さ」の意味を知ることになり、最期に焚き木として消えて行く。
一瞬の積み重ねが生活になり、そしてその積み重ねが人生になる。自分の内なる「自分」と対話する事なく、外側にいる「他人」との会話の中で、人生の羅針盤を決め続ける時、周りが満足する様なあり方は実現できるかもしれない。
しかし、そんな風に長く航海をすればする程、本来自分が思い描いていた「自分」から大きくずれ、気づいた時には埋めきれないギャップの前で呆然として、「できるときに、もっと楽しんでおけばよかった。おしまい、おしまい!」と思わず嘆くのではなかろうか、ちょうど、このもみの木の様に。