・ネットでの動画配信がいよいよ本格的になる可能性がありますね。
“ビジョナリーカンパニー2飛躍の法則” ジェームズ・C・コリンズ |
“イノベーションのジレンマ” クレイトン・クリステンセン(著) |
昨日から、Gyaoで、TBS買収問題の渦中の人、三木谷浩史氏の独占インタビューがGyaoで放送されている。話を聞いていて、彼はビジョナリストだなと感じた。ビジョナリスト(=Visionary man)とは、想像や知恵により将来について考えたり、計画したりする人の事で、“ビジョナリーカンパニー”(日経BP出版センター)で使われている。辞典によっては、非現実的なとかユートピアンとかの記述があり、否定的なニュアンスもあるようだ。もちろん、ここでは肯定的な意味で使っている
本来、このインタビュー放送で大変興味深いのは、既存のメディアを使わず、ネットで流している点だ。今までなら、地上波テレビや雑誌、新聞など伝統的なメディアのどこかがすっぱ抜いてきたのだろうが、今回は全くの寝耳に水だったのではないだろうか?六本木ヒルズの入館は厳重なことや地上族とネット族との「文化交流」が少なく、発想が全く異なるなど、交差する必然性がなかった事も一因あろう。今まで、伝統的なメディアは記者クラブを中心としてきた為に、ネット族との新規のチャンネル開拓を組織として、持っていなかったのではないのかと感じた
ネットや地上波のビジネスモデルには、1)feeモデル、2)広告モデル、3)興行モデル、4)トランザクションモデルの4通りあると言う。これらのビジネスモデルをネットと地上波のそれぞれの特性を生かして、メディアミックスすれば、今より高い高収益モデルになるのではないのかと提案していた。CNNの事例に出し、既存の高収益モデル(いわゆる成熟市場のcash cow)から新たなモデルの構築の必要性を説いていた。これまで規制や保護で新規参入が困難な業種が自由化になった途端に、多くの企業が最終的な消費者の志向に合わせる様に事業体構造や行動を変化させることができず、合併買収や倒産で、淘汰されて来た。既存メディアがどうかは分からないが、少なくとも今まで高収益を維持出来ていたとしたら、それは規制と大いに関係がある様に感じた。
このインタビューを聞くうちに、カラオケ市場での変遷(前述参照)や”イノベーションのジレンマ”という文献が頭に浮かんで来た。これらの事例と、今回の騒動の発端となった放送業界の事例には、全く同じでないにせよ、類似したものを感じる。それは技術革新に既存企業がどのような形で関わってきたか、そして何故既存企業の多くが埋没して行ったのかのプロセスに似ているなと思わざるを得ない
前述の”イノベーションのジレンマ”によると、企業は「バリュー・ネッワーク」という枠組みの中で、「顧客のニーズを認識し、対応し、問題を解決し、資源を調達し、競争相手に対抗し、利潤を追求する。」そしてその中で「経験を積むと、そのネットワークに際立ってみられる需要に合わせて能力、組織構造、企業文化を形成する」ところが、破壊的技術は、既存のバリュー・ネットワークの中ではそのままでは通用せず、別なステージでまず発展して行く。そして徐々にその技術進歩が進むうちに、既存のバリュー・ネットワークで通用する水準まで達成し出すと、浸食を始め、既存企業を駆逐するというシナリオである。既存の経営者は「無能」だから、このような事態になるのではなく、むしろ優秀で、それまでのネットワークを有効に使おうとするから、浸食されてしまうと言う。
さて、このようなこのような考え方を念頭に置けば、正直、今の状況は似ているなと思わざるを得ない。今、放送業界は免許制となっているが、何も免許制から収益を上げている訳ではない。あくまでも手段のはずである。そしてその収益のソースは、広告スポンサーであり、そしてその動向に大きな影響を与える視聴者のはずである。この部分はいくら行政といえども、規制することはできないはずだ。もしブロードバンドがもっと発達し、スポンサーに大きな影響を与える層の視聴者がネットに移行し出したら、どのようになるだろうか?もちろん、一方でネットの成長に疑問を持つ人はいるだろう。しかしいずれ年を経るにつれ、これからネットに親しんで育ってきた層が徐々に増加してくる。少なくとも減る事はないはずだ。伝統的なバリューネットワークという心地良い中から、しがらみを振り切って、果たしてどの程度、外に出る事が可能なのだろうか?このような疑問を放送を聞きながら反芻していた。
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