この絵本にはセリフがまったく、ない。ただ、絵があるのみ。残念な事に表紙がどこを探しても見つからなかったが、にわとりの親鳥の足が描かれているだけ。
たまごが産み落とされ、温められ、徐々にかたちがつくられ、そして、ある時、ひなが、殻から出てくる。ピーピー鳴いたり、えさを食べたりする。時に親鳥の顔をみるが、たいてい、目の前にあるのは足だけ。そうして時を過ごしていく。
確かかなり前に米企業の子育て支援策を取り上げていた時の米経済誌Fortuneの表紙は、絵本と同じ様なイメージで、2〜3歳児の子どもが下半身だけ見える背広姿の男性の足にしがみついている写真であった。
子どもの視点では、大人の足を見ているのである。全体を通しては見ることは少ない。小さい頃のこの風景が大きくなっても原風景となって残り、そして逆の立場になった時、驚き、感謝をするようになる。こうして歴史は繰り返される。