“もりのかくれんぼう”
末吉 暁子 (著), 林 明子 (イラスト)
いつも見慣れた団地の風景がふっとした瞬間に、大きな森になり、そこではくま、りす、さる、きつねなどがかくれんぼをしている。そしてそこに迷い込んだ「けいこ」も動物のリーダーの「かくれんぼう」に引き込まれ、一緒にかくれぼう。「けいこ」が鬼になり、数をかぞえている時に、いつの間にか、元の団地にたっていた。そんなお話。
小さい頃に夢中に遊んだ場所に大人になって行って、その場所の小ささに驚く事があった。その時は大冒険をしているつもりだった事はよく覚えている。どうしてそんな差が生まれるのか?ある時、写真を撮っていて、今更ながらに気づいた事があった。視線の高さの違いである。時に全く異なる風景が見えるのである。低い視線で動き回っている子供には視界がより高い障害物にさえぎられ、空間が狭く感じ、同じ走っていても、より速さを感じてします。ちょうど、4車線の高速道路と両側に店が並んだ1車線の道路の違いと言えば、わかり易いだろう。昔、マントをひるがえし、躍動感を感じるスーパーマンになりえても、今は無理なのである。
視線の違いにより、見える風景と、見えない風景。そんな違った視界を持つ人々たちが、同じ空間を共有しているのである。人は自分たちが見える空間のみを信じ、それに基づいて行動する。そして時に、自分では見えない風景を削ぎ落とすことをしてしまう。だから、その中でも特に、社会環境に大きな影響力を有する「大人」は、力を持つが故に、目に見えないものを大事にする姿勢が必要なのではないだろうか?